相手のことは好きだと思う。一緒にいる時間は楽しいし、誠実な人だとも感じている。仕事や収入も安定していて、結婚相手として大きな問題があるようには見えない。
それでも、結婚を想像すると、気持ちが重くなる。二人で暮らすことだけではなく、お互いの仕事、住む場所、お金の使い方、親の年齢やこれからのことまで頭に浮かぶ。
「この人を好きか」と聞かれれば、好きだと答えられる。けれど、「この人と結婚したいか」と聞かれると、すぐには答えられない。
そんな迷いがあるからといって、相手への気持ちが足りないとは限りません。
好きという気持ちだけでは決められないことが増えていく
若い頃の結婚にも、もちろん現実的な問題はあります。仕事や収入がまだ安定していないこともあれば、子どもを持つかどうか、どこで暮らすかなど、二人で決めなければならないこともあります。
ただ、年齢を重ねてからの結婚には、それまで生きてきた時間も一緒についてきます。それぞれに仕事があり、自分なりの生活のリズムがある。お金の使い方や休日の過ごし方、人との距離の取り方にも、長い時間をかけてできた習慣があります。
一人でも生活できる基盤があるからこそ、誰かと一緒になることで何を得るのかだけでなく、何が変わるのかも具体的に見えてきます。好きな人と暮らせる喜びがある一方で、今まで自分で整えてきた生活を組み替えることへの負担もあります。
結婚したい気持ちと、今の生活を守りたい気持ち。その両方があっても不思議ではありません。
二人のことだけを考えればよいわけではない
年齢を重ねてから結婚を考えると、お互いの親のことが気になる場合もあります。
結婚してすぐに、どちらかの親の介護が必要になるのではないか。離れて暮らしているなら、誰がどのように支えるのか。きょうだいがいる場合は、どのように役割を分けるのか。
まだ何も起きていない段階でそこまで考えるのは、冷たいことのように感じるかもしれません。相手のことが好きなら、親のことも含めて受け入れるべきではないか。介護の可能性を結婚への不安として挙げるなんて、打算的なのではないか。そうやって、自分の中にある心配を言いにくくなることもあります。
けれど、介護には気持ちだけでなく、時間や体力、仕事、住む場所、経済的な負担も関わります。
若い頃に結婚した場合でも、いずれ同じ問題が生じることはあります。ただ、年齢を重ねてからの結婚では、二人の生活が落ち着くまでの時間と、親の支援が必要になる時期が近い可能性があります。
それを心配することは、相手や相手の親を大切に思っていないという意味ではありません。結婚後に起こりうることを、現実の生活として考えているからこそ出てくる不安でもあります。
年齢を重ねるほど、価値観は簡単に変えにくくなる
一緒に暮らし始めてから、初めて気づく違いもあります。お金、家事、健康、仕事、親との付き合い方。どれも、単なる好みのように見えて、その人がどのような家庭で育ち、何を大切にしてきたかとつながっています。
年齢を重ねたから、誰もが頑固になるということではありません。ただ、自分なりのやり方で長く生活してきた分、それぞれに「このほうが自然」「これは譲れない」と感じるものが増えていることはあります。
好きだから、自分も相手に合わせたい。相手にも、自分の大切にしているものを理解してほしい。けれど、どこまでなら無理なく歩み寄れるのかは、付き合っている段階では分からないこともあります。
違いがあること自体よりも、その違いを見つけたとき、二人がどのように扱うのか。一方が正しいことにして、もう一方が従うのか。話題を避け、見なかったことにするのか。それとも、すぐに答えが出なくても、二人で考えようとするのか。
結婚への安心は、価値観が完全に一致していることではなく、違いが表れたときの二人の向き合い方から生まれるのかもしれません。
条件が整っていても、不安が消えるとは限らない
仕事が安定している。収入にも大きな不安がない。人柄もよく、自分を大切にしてくれる。そのような相手であれば、結婚に迷う理由はないように見えるかもしれません。
けれど、結婚は、条件の整った人を選べば自動的に安心できるものではありません。
仕事を続けられなくなったとき。親の支援が必要になったとき。どちらかの体調が悪くなったとき。予定していなかった出来事が起きたとき。そのときに、二人で何を相談できるのか。どちらかだけに負担が偏ったとき、それを当然のことにせず話し合えるのか。
結婚を考えると不安になるのは、将来起こりうる問題そのものが怖いからだけではないのだと思います。何か起きたときに、この人とやったら一緒に考えられるやろか。それがまだ分からないから、決めるのが怖いのかもしれません。
不安を話したとき、二人の間に何が起きるのか
親の介護が心配だと言えば、相手を条件で見ていると思われるかもしれない。一人の生活を手放すのが怖いと言えば、本気で結婚するつもりがないと思われるかもしれない。価値観の違いが気になると言えば、結婚する前から細かいことを言いすぎだと思われるかもしれない。
そんな心配があると、相手に嫌われないよう、不安を自分の中だけで処理しようとします。
けれど、結婚後の問題を今の段階ですべて解決することはできなくても、その話をしたときに二人の間で何が起きるかは見ることができます。
相手は、自分の家族を否定されたように受け取るのか。そんな先のことは考えても仕方がないと話を終わらせるのか。それとも、答えを急がず、自分も気になっていたこととして一緒に考えようとするのか。
自分の側も、相手に安心させてもらうことだけを求めていないか。自分は何を引き受けられ、何を一人では抱えられないのかを言葉にできるか。
そこで見えてくるのは、将来の問題への正解ではありません。簡単には答えの出ないことを、二人でどのように話せるかです。
結婚したくないのか、このままでは決められないのか
結婚を考えると不安になるとき、「私はこの人と結婚したくないんやろうか」と考えることがあります。けれど、本当に結婚したくない場合もあれば、まだ分からないことが多すぎて決められない場合もあります。
相手を好きかどうか。結婚という形を望んでいるか。この人と生活を作っていきたいか。二人だけでは決められない現実が出てきたとき、一緒に考えていけそうか。これらは、すべて同じ質問ではありません。
好きな気持ちがあっても、結婚に進むには確認したいことがあります。反対に、不安があるからといって、この人との結婚を望んでいないと決まったわけでもありません。
結婚するかどうかを急いで決める前に、自分が恐れているのは何なのかを見てみる。今の生活を失うことなのか。相手の家族を含む責任を引き受けることなのか。価値観の違いの中で、自分ばかりが合わせることになるのが怖いのか。
そして、その不安を相手に話したとき、二人の間には何が生まれるのか。その人と生活する自分を想像したとき、どのような自分になりそうか。気を張り続けるのではなく、自分らしくいられそうか。
結婚後のすべてを予測することはできません。それでも、まだ起きていない問題を一人で抱えて結論を出すのではなく、分からないことを分からないまま二人の間に置けるかどうか。
年齢を重ねてからの結婚で見たいのは、何の不安もない相手かどうかだけではありません。不安が出てきたときに、この人と一緒に考えていけるか。そして、この人との生活の中で、自分らしさを失わずにいられそうか。その両方なのだと思います。
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